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医師の心を動かすマーケティング最前線 AIが掘り起こす「医師のホンネ」(後編)

急速なデジタル化により、医師への情報提供は大きな変革期を迎えている。デジタルチャネルが多様化する中で、人による情報提供にはどんな価値が残されているのか、そして医師は今メーカーに何を期待しているのか。その答えを探るべく、独自調査の結果を交えながら、皆さんに今後のマーケティング活動のヒントとなる情報をお届けしたい。

前編では、市場環境や情報収集について紹介し、

中編では、自主調査結果から医師の情報源について紹介したが、

本編では、なぜ医師が人からの情報を重視するのかについて紹介する。 

なぜ人からの情報提供を重視するのか?

 では、なぜ医師はこれほど人からの情報を重視するのか?それを明らかにするには、医師のインサイトを明らかにしていく必要がある。アンケートで単純に理由を聞いたところで、得られる情報は表面的な内容になりがちだ。今回のウェビナーのタイトルのように「医師の心を動かす」ためには、相手が何を考えているのか、何を思っているのかを把握し、それに対して働きかけることが重要であり、そのためには表面的な情報ではなく、隠れた情報にこそ大きな意味があると考える。そこで今回は従来の調査では踏み込めなかった医師の本音やインサイトを探る新しいアプローチを試みた。

 

アンケートサイト×AIで自由回答を深掘り

 今回の調査ではアンケートサイトにAIを組み込み、自由回答を深掘りできるようにした。具体的には、回答者が入力した自由回答の内容をAIがその場で解析し、個人ごとに最適化された追加の質問を自動で生成する。この新機能により、従来の調査では得られなかった深い洞察や具体的なエピソードを引き出すことが可能になる。

 

 このツールを実際に利用した際の回答例を見てみよう。これまで定量調査における自由回答は1つの質問文に対して1つの回答をして終わりという流れだった。そのため回答の真意など、実際に何を考えているか分かりづらいケースもあった。このツールでは回答者の回答に応じて追加の情報を引き出す設問がAIにより作られるため、自然な流れで前問の情報に関連した情報をプラスで引き出すことが可能になる。図のA先生とB先生は回答が違うので、それに応じてAIがそれぞれに質問を作成して会話が続いていく。A先生の場合、「重視した理由を教えて」という質問に対し、最初は「効果や特徴、副作用などの最新情報を得るため」と回答している。それに対してAIが追加の質問をし、A先生は「Webより印象に残りやすく、質問もしやすいから」と回答している。更に深掘りした「どういう点が印象に残りやすいか」という問いに対し、A先生の「都合の悪い情報も聞き出せるところ」という答えが、重視した理由の隠されていた部分となる。

メディカルウェビナーコラム14_AI深掘りツール

 

 

人からの情報提供を重視する理由の変遷

 ここで得られた回答データについて、最初の答えのあと、追加質問で深掘りしていくにつれ、内容がどう変わり、どんな情報が出てきたか、図で見える化した。左側の縦の青いラインが最初の質問への回答で、その部分が長いほどその回答が多かったことになる。最も多いのは「医師が求める情報の種類や深さに関する」いわゆる情報の質を求める声である。次に多いのが「対面ならではの利点、つまりコミュニケーション方法を重視する」声である。
ここからAIで深掘りすると、右に行くほど深掘りで変わっていった内容となるが、注目して欲しいのが「日々の診療に直結する実践的な情報への評価」という項目で、最初の回答ではラインは短いが、深掘りするにつれて徐々に長くなっている。これは最初医師が口にするのは「詳細な話が聞けるからいい」といった表面的理由だが、深く聞いていくと、「自分の受け持ち患者に対してこの製品をどう使えば良いのか、具体的にこれまでとどう変わるのか」といった極めて具体的で実践的な情報があるので、人からの情報提供を重視する、という回答につながっていくことが分かる。メディカルウェビナーコラム16_人からの情報提供を重視する理由の回答移り変わり

今後の情報提供として期待すること

 今後の情報提供として期待する点も医師に聞いた。今度は左上の「その他」が最も多いが、これは「特にない」という回答が大多数を占めたためである。しかし、ここでAIが深掘りしていくと「その他」が減り、医師が何かしらの改善要望を心の中に持っていたことが分かる。また、こちらも「日々の診療に直結する具体的な情報を求める声」は最初こそ小さいが、深掘りすると徐々に大きくなる。具体的な発言を見ると、「日々の診療に直結する情報」こそ、医師にとってデジタルだけでは得られない、人からの情報提供で強く期待している価値の核心部分なのではないかと思われる。

メディカルウェビナーコラム17_情報提供に対して期待すること(自由回答分析)

 アンケートからは、デジタル化も進んでいるため、医療系のWebサイトを通じた人を介さない情報源も一定数活用されていることが見られたが、依然として人からの情報提供の存在は大きいという結果が出た。医師が求める情報源として、アンケートの表面上は「医薬品の有効性、安全性、医療機器の機能、利便性」といったいわゆるスペック的な声が大きく上がっている。しかし、その背景に隠れた本当に知りたいこと、いわゆるインサイトについては、「実用性と意思決定につながる情報」であることがデータから明らかになった。製品のスペックを伝えるのはもちろん重要だが、それだけでは不十分だ。その情報が医師の目の前の患者にとってどんな意味を持ち、実際の臨床現場でどう活用できるのか、患者と診療の文脈に沿って情報を翻訳し、医師のニーズに合わせて具体的に提供していくことが必要となる。当たり前の内容ではあるが、今回は経験則ではなく、実際のデータでそれが明らかになったと思う。

 

 

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