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BtoB企業のブランディング施策「ターゲットに届かず」3割 -成功するための3つのカギとは-

大切なものは目に見えない——これはサン=テグジュペリ著『星の王子様』のなかの有名な言葉だが、企業経営においてもブランドのような数字や形でとらえにくいものこそ大切であり、価値を生み出す源泉になる。

ブランド力を高め、それをどう生かすかは近年、企業間の取引(BtoB)が中心の企業にとっても重要になっている。だが十分な取り組みができていないケースも多いようだ。「大事なのは認識しているが何から手をつけていいのかわからない」「自社にあった取り組みは何かがつかめない」。BtoB企業のブランディング担当者からは、こうした声も聞こえてくる。

日経リサーチが実施したBtoB企業のブランド戦略に関する2つのアンケート調査から、成功のカギを読み解いた。その結果、ブランディングに成功しているBtoB企業は「ブランドを訴求するターゲットの明確化」「施策の継続的な効果検証」「緻密な調査設計」の3つを行っていることがわかった。

このコラムでは、BtoB企業のブランド戦略でおさえるべきポイントを、アンケート調査結果とともに解説する。

概要|2つのアンケート調査から見えてきたこと

多くのBtoB企業で効果的なブランディング訴求ができていない

日経リサーチが企業のブランディングに関わるビジネスパーソンに行ったアンケート調査では、狙いとする顧客層にブランディングが「行えていない」と答えた企業は「行えている」を上回り、なかでもBtoB企業が顕著だった。

ブランディングが成功しているBtoB企業は「狙いが明確」

アンケート調査の自由回答から効果的なブランディングが「行えている」と答えたBtoB企業の声を拾うと、ターゲットを限定し、そこに向けて重点的な取り組みを行っていることがわかった。

効果的なブランディング施策には「定期的な効果検証」が不可欠

同じく効果的なブランディングが「行えている」BtoB企業の声からは、施策の検証を定期的に行っていることもがわかった。

ブランディング戦略に長けた人材とノウハウの不足

ブランディングがうまく「行えていない」と答えたBtoB企業からは、人材の不足や体制の不備が理由として挙げられた。

適切なブランド調査が設計できず、結果の活用もできていない

効果的なブランディング施策のためには、自社のブランド力や顧客の求めるものを把握するための「ブランド調査」が欠かせないが、適切な設計ができているかの不安や、施策への活用に課題を抱えている企業が多いことが明らかになった。

 

調査概要

    「調査についてのアンケート」 

実施日: 2022年11月30日~2022年12月5日
対象者: 自社で活用するための、アンケート調査・マーケティングリサーチの担当者になったことがある方
回答者数: 766人
調査手法: 日経IDリサーチサービスに登録、上記条件に合致した方を対象にしたインターネット調査

 

    「企業の認知とイメージに関するアンケート」 

実施日: 2022年12月12日~2022年12月14日
対象者: 自社の企業・商品・サービスのブランディングに関わっている方
回答者数: 413人
調査手法: 日経IDリサーチサービスに登録、上記条件に合致した方を対象にしたインターネット調査

 

アンケート結果は勤務先の商品やサービスを「すべて一般消費者向け」「すべて企業向け」「一般消費者向けと企業向けの両方」の3つに分けて集計している。ここでは「すべて一般消費者向け」をBtoC企業、「すべて企業向け」をBtoB企業とする。

 

1.重要なターゲット(狙いとする顧客層)に施策が行えているか

ブランド担当者コラムグラフ1-1

 

 重要度の高いターゲットに対して、ブランディング施策が「行えている」との回答は全体の24.5%、BtoB企業ではさらに低い21.1%にとどまった。「行えていない」は全体で24.9%、BtoB企業で32.2%と、いずれも「行えている」より多かった。

企業のブランド戦略においては、狙いとする顧客層をきちんと定めて、そこにアプローチすることが重要になる。多くの企業でそれが有効に機能しておらず、特にBtoB企業の苦戦が目立つ。

2.具体的にどんなブランディング施策を行っているか

ブランド担当者コラムグラフ2

 

具体的なブランディング施策を選択肢のうちから複数回答可で選んでもらったところ、「展示会・イベントへの出展」(42.9%)、「一般紙・雑誌への紙面広告出稿」(34.1%)、「一般紙・雑誌のHP上のインターネット広告」(33.7%)などが上位に入った。BtoB企業も総じて同じ傾向だが、「展示会・イベントへの出展」(46.1%)、「セミナーやウェビナー開催」(34.2%)などが多いのが目立ち、一般紙への広告出稿は紙面・HPともに20%台にとどまった。

BtoB企業の担当者の多くは、ブランド価値を高めるために、特に展示会やセミナーなどに注力していることがうかがえる。

3.重要なターゲットにブランディングが「行えていない」BtoB企業の声

なぜ、BtoB企業はブランディングで有効な施策を十分に打ち出せていないのか。BtoB企業のブランディング担当者の声を、自由回答のなかから拾ってみる。まず目についたのが人材の不足、体制の不備を指摘する以下のようなコメントである。

 

ブランド担当者コラムFA1

 

 

ブランドという数字でとらえにくいものに対してどれだけお金を費やすかは経営判断として難しい面がある。「費用対効果が見えない」といった声も複数聞かれた。またブランディングの基本の方向性が定まっていないことを指摘する次のようなコメントも注目される。

 

ブランド担当者コラムFA2

 

 

人材や体制の不備にも関係するが、具体的に施策を進めるためのノウハウがなく、うまくいかないケースも多いようだ。

 

ブランド担当者コラムFA3

 

 

ブランディングに対する意識はあっても、現状では新規の顧客にうまくアプローチできず、何から手をつけていいのかわからない、といったジレンマがうかがえる。

4.重要なターゲットにブランディングを「行えている」BtoB企業の声

では、どんな企業が効果的なブランディングを実施できているのだろうか。担当者の声を自由回答から取り上げてみると、まず目についたのが、ターゲットを限定し、そこに向け重点的に動いているという、次のようなコメントである。

 

ブランド担当者コラムFA4

 

 

ブランディングの施策はやりっぱなしにせず、その効果や課題を定期的に検証する必要があるが、それを強調するコメントも多く見られた。

 

ブランド担当者コラムFA5

 

 

ほかにも「データ量の多さと多様なサービスの組み合わせ」「発信手段の多様化」「定期的な情報発信」などの指摘があった。人材や体制に限界もあるなかで、ブランディングの方向性を社内できちんと決めたうえで、これまでの施策で得た知見やノウハウを活用して取り組む。そうすることで一定の成果を上げている様子がうかがえる。

5.ブランド調査で担当者が感じている課題

有効な施策を実施するうえでカギになるのが、自社のブランド力はどの程度か、顧客は何を求めているのか、これからの課題は何かなどを把握するための「ブランド調査」である。

ここで日経リサーチが実施したもうひとつのアンケート調査の結果を見てみよう。先ほどのアンケートと同様、回答者は日経IDリサーチサービスの登録者で、2022年11月30日〜12月5日にかけてインターネットを通じて調査した。

企業・製品の認知度やブランドの調査を手掛けたことがある87人のビジネスパーソンを対象に「ブランド調査で各担当者はどんな課題を感じているか」について複数回答可で聞いたところ、「調査結果が活用しきれなかった」(33.3%)、「課題に対し、正しい調査設計ができなかった」(27.6%)、「調査の知見がなく実施が難しかった」(24.1%)などの回答が上位に挙がった。

 

ブランド担当者コラムグラフ3

 

 

特にBtoB企業では「調査の知見がなく実施が難しかった」との回答が28.0%と、ほかに比べて高かった。BtoB企業によっては、ブランディング施策の取り組みが浅く、十分なノウハウが蓄積されていない面がある。自由回答からは「調査の結果と今後の長期的な期待値の相関が、思うように描けなかった」という戸惑いの声も聞かれた。

調査はやみくもにやっても効果は薄く、どんな相手に何を聞くのか、どのような聞き方をするか、何のために聞くのかなどを、事前に十分に練る必要がある。

いずれにせよ、ブランドという「目に見えないもの」を相手にする以上、それ相応の対策や準備が必要だ。経験に基づいた知見、ノウハウが不可欠で、そのためには会社の体制を整備するとともに、信頼できる外部のパートナーを見つけることが有効であろう。

考察|なぜBtoB企業にブランディングが必要なのか

一つの理由は、競争環境や購買プロセスの変化である。多くのBtoB企業はこれまで長期の取引が中心で、ブランディングに力を入れなくても一定の品質を確保し、過去の取引実績があれば仕事を得られた面がある。

ところが技術革新にともなってビジネス環境が様変わりし、購買プロセスが見直され、企業の系列関係は崩れた。新たな競合先に対する打ち手の検討や、顧客の事業領域の変化に合わせたソリューション提供も必要だ。BtoB企業であってもブランディングに無関心のままでは、顧客を十分に確保できなくなるはずだ。

二つめの理由として、人材の流動化が進みつつあることも見逃せない。企業の成長のためには優秀な人材の確保が欠かせないのは言うまでもなく、認知度や企業イメージが高まれば、採用の面で有利になるのは間違いないだろう。

三つめは、市場からの評価を念頭におくことの必要性が挙げられる。貯蓄から投資へという政府の呼びかけもあって、個人投資家のすそ野が広がりつつある。ブランド力が高ければ市場の評価を集めやすく、資金調達の面でも有利になるだろう。

まとめ|ブランディングが成功するために行うべき3つのこと

  • ブランド訴求するターゲットを明確化する
  • ブランディング施策の効果検証を定期的に行い、効果を最大化する
  • 経験豊富な知見とノウハウによる緻密な調査設計を行う

 

 

日経リサーチは創業から50年近くのブランド調査実績があり、最大600社のコーポレートブランドのデータベースを保有している。長年の実績と知見をもとに、重みを増すBtoB企業のブランディングにも的確にアドバイスができる体制が整っている。

強みは何といっても、自社のビジネスターゲット層にリーチができることである。日経電子版の読者を中心とした国内最大級のビジネスパーソンプラットフォームである「日経IDリサーチサービス」を活用することで、自社が目指すビジネスターゲット層の評価を得ることができる。ブランディング活動をより有益なものとするために、ぜひ活用してほしい。

 

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