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アンケート結果のまとめ方|BtoBでの集計や分析方法の基本(前編)

アンケート結果は、サービスや業務の改善において重要な指針となります。ただし、アンケートを行うだけでは十分ではなく、データを有益に活用するための集計方法と分析方法を理解する必要があります。そこで、前編となる当コラムでは、アンケート結果を効果的に活用するための基本的な3つの集計方法と、その分析・活用方法を解説します。

 

後編では、アンケート分析の手順とBtoBマーケティングにおける事例について、詳しくご紹介します。

 

アンケートを有効にまとめるための3つの集計・分析方法

有効なアンケート収集をするためには、実施する前にどのような集計・分析をするかを設計しておくことが重要です。


基本的なアンケートの集計方法としては、「単純集計」、「クロス集計」、「自由記述分析」の3つがあります。

単純集計

単純集計とは、選択式の回答を集計し、結果を算出する集計方法です。
例えば、下記の表のように、質問に対して選択肢を用意し、選択された回答者数や、その割合(%)を算出します。

                    クロス集計コラム_1

 

単純集計は、質問ごとの全体的な傾向をつかみたいときに、有効な手段となります。

 

しかし、単純集計では基本的な選択肢のみの集計になるので、細部については把握できません。
そのため、他の集計手法と併用することをおすすめします。

クロス集計

クロス集計は、複数のデータを掛け合わせて集計する方法です。

 

例えば、アンケート回答者の役職や所属部署などの属性や、アンケート内で聴取した回答結果などのデータを掛け合わせて、定量的に集計します。これにより、単純集計より具体的な状況を把握することができます。

 

BtoB活用シーン1 役職別のターゲット分析

 

クロス集計コラム_2-1

 

例えば、製品・サービスの選定や導入の際に、キーパーソンとなる最終意思決定者がどのような役職層なのか、情報収集をしている推進者がどのような役職層なのかを把握することができます。

 

BtoB活用シーン2 企業規模別のターゲット分析

 

クロス集計コラム_3

 

例えば、製品・サービスのターゲットとする企業規模の市場を把握することができます。

 

BtoB活用シーン3 ビジネスターゲットのミッション、関心のあるテーマの把握

 

クロス集計コラム_4

 

例えば「DX検討や推進」、「経営計画の策定」、「サステナビリティの推進」など、ターゲットとするビジネスパーソンがどのような領域・テーマに関心があるのかを把握し、マーケティングやコミュニケーション施策に活用することができます。

 

BtoB活用シーン4 ビジネスターゲットの事業課題の把握

 

クロス集計コラム_5

 

例えば「営業力強化」、「新規ビジネスの立ち上げ」、「顧客満足度の向上」など、ターゲットとするビジネスパーソンがどのような事業課題があるのかを把握し、事業開発や、営業・マーケティング戦略に活用することができます。

 

BtoB活用シーン5 自社の認知度の把握

 

クロス集計コラム_6

 

商品・サービスの最終意思決定をする立場、情報収集をする立場となるビジネスパーソンが、自社をどれぐらい認知しているかを把握することができます。競合他社の認知をあわせてアンケートに入れることで、自社の立ち位置を理解することができます。

 

上記の例のように、クロス集計を用いることで、様々な切り口でビジネスターゲットの傾向や、自社のポジショニングを把握することができます。特にBtoB事業においては、狙ったビジネスパーソンや目的に合わせて分析を行うことが肝要です。

自由記述分析(自由回答集計)

自由記述分析は、回答者にテキスト(文章)で自由に回答してもらい、その結果を分析する方法です。


この手法の利点は、数値や選択肢だけでは得られない、人間の微妙な感覚や想定外の意見を捉えられることです。例えば、新サービス・事業の開発や見直し案が複数ある場合など、コンセプトテスト(受容性調査)が必要になるケースで、評価の理由や意見、具体的な利用方法などの定性的な情報を知りたい場合に役立ちます。

 

デメリットや注意点としては、質問があまりに抽象的すぎると、回答者が様々な解釈をしたり、混乱したりする恐れがあり、アンケートを行う側も有益なデータを収集することが難しくなる点が挙げられます。

例えば、以下のような質問は、「抽象度が高い」聞き方になります。

Q:新しいITシステムの導入について、どう思いますか。

このように抽象度が高い聞き方をすると、回答する側も何を答えて良いかわかりません。仮にデータを収集できたとしても、傾向の分析が難航します。


そのため、下記のように具体化することが重要です。

Q:自社で新しいITシステムを導入する際に、選定の決め手として重視していることを教えてください。


自由記述で得た回答は、テキストマイニングを利用して、どのような話題が多いのか全体像を把握したり、回答者ごとの特徴を抽出したりすることができます

 

日経リサーチが提供するテキストマイニングツール「KeyExplorer」では、アンケートで聞いた定量的なデータと自由回答を一度に分析できます。回答傾向をターゲットごとに解析した上で、ChatGPTの機能を利用してペルソナ像を自動生成することも可能です。

 

 

ワードクラウド+要約-1

押さえておきたいBtoBアンケートの3つのコツ

より有益なアンケート結果を得て、ビジネスに活用するためには、調査設計時に押さえておきたいポイントがあります。なかでも意識しておきたいのは、以下の3つです。

1.対象者条件の設定
BtoB調査の場合、対象者条件の設定が特に重要になります。調査の成功を左右する重要なポイントは、「ビジネスターゲット」にどれだけ近づけているか。ビジネスの方向性や戦略を正しく決定するためには、企業内で中心的な存在の「ビジネスリーダー」や、製品・サービスの導入に関わる「検討関与者、決裁者」の意見やニーズを把握し、彼らの視点を的確に捉えることが不可欠です。

 

2.対象者が答えやすいアンケート構成
BtoB調査では、ビジネスパーソンに自身の業務に関する悩みや課題を聞くこともあります。しかし、職務に直結する内容に関しては率直な回答が得られない場合もあります。そのため、質問文や選択肢を慎重に考えるとともに、「回答内容は秘匿情報として取り扱うこと」、「統計数字として処理すること」など、調査者としての配慮を伝える前文を提示することが重要です。

 

また質問文や選択肢はシンプルで分かりやすい文章にしましょう。質問文は3行以内に収まるようにし、選択肢は8~10個程度に抑えるなどの工夫で、回答しやすくなります。

3.アンケート後のインタビューに繋げられる事前承諾
事前に個別インタビューの可能性について回答者に伝えることも視野に入れておくと良いでしょう。深掘りが必要な回答者と連絡を取る際にスムーズに進められ、アンケート結果に反映されない定性的な面も直接ヒアリングすることができます。

 

BtoB企業/事業のマーケティングやリサーチの担当者がアンケートを実施するときに押さえるべきコツをもっと詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
BtoBアンケートで押さえるべき3つのコツ

 

その他のアンケート分析の手法

より多くの要素を使って分析したい場合は、目的に応じて様々な手法があります。分析の目的は要約と予測に大別できます。さらに具体的な分析例を知りたい方は、それぞれの用語ページをご覧ください。

 

要約のための分析例

主成分分析

因子分析

コレスポンデンス分析

・クラスター分析

 

予測のための分析例

・回帰分析

判別分析

・コンジョイント分析

・ベイジアン分析

 

【後編】アンケート分析の手順と事例を紹介

 

今回の前編では、アンケート結果を有意義なデータとして活用するための、基礎的な集計方法と分析方法について解説しました。

 

後編では、実際にアンケートを進めていく手順やアンケート後の施策を、BtoBマーケティングでの実例と共に解説していきます。

 

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