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企業情報の基礎知識

続・日々公表される「適時開示」とは?-カテゴリ別傾向から探る、戦略的企業情報ウォッチ術

コラム「日々公表される「適時開示」とは?|ビジネスチャンスとリスクを掴むための情報活用術」で「適時開示」の基本について取り上げましたが、今回はもう少し掘り下げて、代表的なカテゴリごとに開示のタイミングを見ていきましょう。

 

 

 

頻出ワードで掴む適時開示の全体像

まずはこちらの図をご覧ください。

 

 

コラムvol5_1

 


上の図は2025年2月~7月(半年間)の適時開示、約48,000件のタイトルの頻出ワードをまとめたものです(特徴が出やすいよう、類似のワードを集約しています)。キーワードだけでもどのような資料が多いのか、ある程度想像がつくのではないでしょうか。


ここから詳細を分析するにあたって、まずは頻出ワードのうち、キーワードだけでは分類しづらいようなワードを除いた上で、代表的な6つのグループを作成しました。

 グループ   キーワード 

1.業績関連資料

決算短信、四半期決算短信、通期業績予想、業績予想の修正、営業外損益、特別損益、減損損失

2.IR関連資料

決算説明資料、補足説明資料、月次業績、配当予想、増配、減配、記念配当、株主優待、株主還元方針、定時株主総会、臨時株主総会、株主提案、基準日設定

3.人事関連資料

代表取締役、役員、執行役員、役員人事、取締役候補者、社外取締役、辞任、人事異動、役員報酬、インセンティブプラン、従業員持株会

4.事業関連資料

中長期経営計画、支配株主等、主要株主、子会社化、組織変更、業務提携、合併、買収、株式交換、会社分割、特定子会社、基本合意書締結、解散・清算

5.ファイナンス関連資料

自己株式取得、自己株式処分、株式報酬制度、新株予約権、ストックオプション、新株式発行、株式取得、株式譲渡、売出し、株式付与、払込完了、発行内容確定、月間行使状況、第三者割当、公開買付け、意見表明、大規模買付行為、社債、期限前弁済、

減資、株式分割、株式併合など

6.ファンド関連資料

ETF、収益分配金、収益分配金見込額、運用状況、資産運用会社

 


次に、それぞれのキーワード(または類似のワード)を含む資料を日付・時間ごとにプロットしました。バブルの大きさは、同日同時刻に発表された資料の数です。


コラムvol5_2

 

 

決算発表ピークと完全に連動 -業績関連、IR関連

最もわかりやすい傾向を示しているのは業績関連資料IR関連資料の2カテゴリです。

 

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業績予想の修正や大きな損益の発生報告、配当に関するお知らせなどはいずれも決算短信とほぼ同じタイミングで公表される傾向があると考えられます。

 

グラフから、15時半が最も集中するタイミングであると読み取れますが、決算発表の集中時期(薄い緑のエリア)は取引時間中の公表資料も少なくありません。

決算期末や有報・株主総会シーズンに活発化 -人事関連、事業関連

決算発表と連動する部分もありつつ、やや異なる傾向を示しているのが人事関連資料事業関連資料の2カテゴリです。

 

コラムvol5_4

 

決算発表が集中する時期にも公表資料は増えますが、業績・IR関連資料と比較すると、3月末と6月末(薄い水色のエリア)にも山がある点が異なります。


3月末は3月決算企業の決算期末と12月決算企業の有報・株主総会シーズン、6月末は3月決算企業の有報・株主総会シーズンにあたります。役員人事や事業に関する重要な事項(買収など)は株主総会で決議が必要な事項であることから、この時期にも発表が多くなっていると考えられます。

 

もう一点、業績・IR関連資料と異なる点としては、発表が集中する時期であっても取引時間中に公表されることは少なく、15時半または16時の発表が多い、という特徴があります。

年間を通じて継続的な情報開示 -ファイナンス関連、ファンド関連

あまりピークに左右されない独特な開示パターンを示すのが、ファイナンス関連資料ファンド関連資料の2カテゴリです。

 

 

コラムvol5_5

ETFやETNは毎営業日必ず開示する資料があるため、ファンド関連資料は他とは全く異なる開示パターンです。午前中の開示が多いのが特徴的です。


ファイナンス関連資料は決算発表や株主総会などのイベントと全く無関係というわけではないのですが、様々な資料を公表しているため、総合的にみるとピークらしいピークがなく、年間通して公表されているような分布となります。(なお、自己株式の取得状況は月初に開示すべき資料のため、少し分かりづらいのですが、毎月初に小さなピークがあります)。

 

また、時間的な特徴として、15時半の開示は多いものの、16時・16時半・17時など、遅い時間にも常に開示がある点が特徴的です。

 

いかがでしたでしょうか。一見、無秩序に発表されているように見える適時開示も、その種類ごとに特徴的なリズムを刻んでいることがお分かりいただけたかと思います。

 

ウォッチ対象の企業が「いつ、どのような情報を出しそうか」という“当たり”をつける上で、こうした傾向分析は一つの武器となり得ます。

 


めまぐるしく変化する経済環境の中、競合他社や協業先の動きを素早く把握することが、精度の高いマーケティングや営業戦略を行う上でのカギとなります。


日経リサーチでは、ビジネスの羅針盤となる企業情報データベースに関する様々な知見を有しています。企業情報のタイムリーな収集・活用に関して課題を感じている方はぜひお問い合わせください。

 

この記事を書いた人

コラム執筆者_堀江
デジタルキュレーション本部 DC第3部 部長
堀江 晶子

日本経済新聞社の媒体に掲載される財務情報を担う部門を統括する。スマートワーク経営調査などの企業評価調査の他、採用計画調査、賃金動向・ボーナス調査など人事・労務系調査や、アナリストランキング、銀行ランキングなど金融系調査をこれまでに担当。

 

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