生活者はどうお金と向き合うのか? 7つのタイプから読み解く顧客心理
「投資に興味はあるけれど、何から始めればいいかわからない」「老後の資金が心配だが、リスクは取りたくない」「そもそもお金のことは考えたくない」——同じ日本に暮らす生活者であっても、金融との向き合い方は実に多様です。
日経リサーチが全国2,748名を対象に実施した生活者金融定点調査「金融RADAR」2025年版では、ライフスタイルや価値観を軸にした独自のクラスター分析を実施。生活者を7つの「価値観クラスター」に分類し、各クラスターの金融行動・意識を多角的に分析しました。
金融機関のマーケティング担当者や商品開発担当者が「誰に、何を、どう届けるか」を考える上で、示唆に富む結果が浮かび上がっています。
7つの価値観クラスターとは——生活者を「お金の使い方」で分ける
今回のクラスター分析では、43項目にわたるライフスタイル設問への回答パターンをもとに、全回答者を以下の7クラスターに分類しました。各クラスターの命名は、金融行動との関連で最も特徴的な行動・価値観を反映しています。
①計画的・コスパ重視のアクティブ層(n=303、平均年齢47歳、男性59.7%)
コスパ・合理性を重視し、金融機関への依存度が低い自己完結型
②トレンドよりペット優先のマイペース層(n=514、平均年齢49歳、女性53.9%)
ペットや日常の豊かさを大切にし、堅実な積立投資を進める層
③意識高い系・ソロ充実層(n=413、平均年齢50歳、女性56.7%)自己投資意識が高く、個人としての資産形成に積極的な層
④家族最優先層(n=335、平均年齢49歳、男性55.8%)家族のための資産形成ニーズが強く、デジタルチャネル志向も高い層
⑤コスパ度外視・体験エンジョイ層(n=338、平均年齢50歳、女性55.6%)体験消費を重視し、金融への関与度は相対的に低い層
⑥徹底的なコスパ至上主義層(n=335、平均年齢58歳、女性59.4%)貯蓄・株式保有が多く、平均年齢高め。対面チャネルを重視するシニア富裕層的な特性
⑦ペット非所有のザ・スタンダード層(n=510、平均年齢43歳、男性58.8%)比較的若く、今後の投資拡大意欲が全クラスター最高水準
NISAへの態度——「使っていない」理由のクラスター格差が鮮明
NISA(つみたて投資枠・成長投資枠)は制度改正を経て普及が進んでいますが、利用率はクラスターによって大きく異なります。現在NISAつみたて投資枠を保有している比率は全体で17.8%ですが、クラスター別に見ると見えてくる構造があります。
「②トレンドよりペット優先のマイペース層」の保有率は23.9%と最高水準。「④家族最優先層」も21.8%と高く、将来への備えを積極的に行う傾向があります。
NISA非利用者に理由を尋ねると、クラスター間で明確な違いが出ました。「⑤コスパ度外視・体験エンジョイ層」では「投資するお金がないから(35.9%)」が最多で、手元資金の制約が最大の壁となっています。一方「④家族最優先層」も「お金がない(35.8%)」が1位ですが、「制度が複雑(14.4%)」「時間がない(7.4%)」も全クラスター最高水準で、子育て等で手が回らない実態が反映されています。
特に注目したいのが「⑥徹底的なコスパ至上主義層」。NISA未利用の理由として「興味がない(21.4%)」が全クラスター最高で、積極的に他の運用手段(株式・定期預貯金)を選好する「あえて使わない層」の存在が見えてきます。
NISAの普及・利用促進を図る金融機関にとって、「なぜ使わないのか」をクラスター別に把握することは、アプローチ戦略の精度を高める上で欠かせない視点といえるでしょう。

「対面」か「デジタル」か——金融手続きへの姿勢もクラスターで分断
金融機関の店頭窓口とオンラインの使い分けについても、クラスター間の差異が鮮明です。生命保険商品の「情報収集・相談」において「店頭で行いたい(計)」が全体で28.8%に対し、「インターネット上で行いたい(計)」は31.2%と拮抗していますが、クラスター別に見ると対照的な姿が浮かびます。
最も対面志向が強いのは「⑥徹底的なコスパ至上主義層」で、生命保険情報収集の「店頭で行いたい(計)」が38.5%と全クラスター最高。同層は保険加入・申し込みでも41.2%が店頭志向であり、シニア層らしい対面重視の姿勢が一貫しています。

対照的に、「④家族最優先層」は投資商品の情報収集において「インターネット上で行いたい(計)」が40.6%と最高水準。投資商品の購入・申し込みでも41.2%がデジタル志向で、なるべく効率よく手続きしたいという多忙な子育て世代の心理が透けて見えます。
また「①計画的・コスパ重視のアクティブ層」は金融機関への相談意向そのものが最も低く、「金融機関に相談したいと思わない」が83.2%と突出しています。この層に対しては、相談を促すよりも自己判断を支援するツールやコンテンツを提供する方が効果的かもしれません。

今回は、生活者金融定点調査「金融RADAR」2025年版のクラスター分析から、貯蓄・投資の実態、NISA活用の壁、そして金融手続きにおけるチャネル選好の分断という3つのテーマを取り上げました。7つのクラスターはそれぞれ異なる「金融との向き合い方」の志向があり、それを無視した一律のアプローチは効果を発揮しにくい時代になっています。
「金融RADAR」2025年版は、約200項目におよぶ豊富な質問でリテール市場を把握でき、マーケティング施策検討の基礎資料として、データをご提供しております。
金融RADARは前身を含めると30年以上の歴史と実績があり、調査結果は金融機関をはじめシンクタンク、大学など各方面で利用されています。今回の調査結果や商品内容の詳細に関してご関心がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。(回答者属性と質問項目一覧のダウンロードも、下記ページより可能です。)
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