医療情報提供のDX実態調査、医師約7,000人が回答〈後編〉
2025.7.1
日経BP運営の「日経メディカルOnline」に登録する医師を対象に2025年3月に実施し、7,023人から回答を得た「医療情報DX調査」。コラム〈後編〉では、医師が製薬業界のDXの取り組みに対して感じている課題と期待について紹介したい。
医師が選ぶ「DXの取り組みが評価できる企業」ランキングは、コラム〈前編〉で紹介した通り、首位が第一三共で、武田薬品工業、ファイザーが続くかたちとなった。いずれも回答率が5%に満たず、評価されたとは言い難いが、医師はどのような取り組みを評価ポイントに据えているのか聞いた。
最も重視しているのは「最新情報の提供」(33%)で、「必要な情報が網羅されているか」(29%)が続いた。2023年3月に実施した同様の調査と同じ結果だった。「最新の情報」で評価が高かった企業は参天製薬、中外製薬、アストラゼネカなど。網羅性では武田薬品の評価が高かった。第一三共は全項目で満遍なく評価を得ている。
■「製薬会社への期待」の3位に「情報開示の迅速さ」
医師が日頃、製薬会社にどのような期待をしているか、についても聞いた。
最も多かったのは「製品の信頼性」(34%)で「品質管理の徹底」(26%)が続いた。医療現場の安全を第一に考える医師が医薬品の安全性や品質を重視するのは当然の結果だが、注目すべきは「情報開示の迅速さ」(20%)「学会・講演会による積極的な情報発信」(18%)といった「情報発信」への期待が高い点だろう。
■医師が求める「即応性」「中立性」「使いやすさ」
迅速で信頼性の高い情報発信を実現するためのDXに対して、医師はどのようにみているのか。最後に自由記述による回答を紹介したい。回答者の大半は「わからない」と回答しているのだが、詳細に回答した医師の声を拾ってみると、製薬業界の取り組みの課題が見えてくる。以下にいくつか回答を抜粋して紹介する。
医師の声を大きくまとめると①自社製品の優位点ばかり強調しない中立・公平な情報発信②必要な情報をすぐに取り出せる高い利便性③セキュリティということになるだろう。業界共通のプラットフォームの構築など、実現に時間と費用を要する要望も多いが、即応性や使い勝手については生成AIなどを上手に活用すれば、すぐにでも対応可能な対策ではないだろうか。すでに実施している企業も多いが、医師の満足度が上がらないとすれば、医師のニーズを的確につかめていない可能性が高い。
これだけデジタル技術が社会に浸透しても、一定の割合の医師がMRからの情報収集を重視している理由を探ることが最も重要だ。完全なデジタルシフトで効率を極める道筋だけでなく、MRとデジタルの役割分担のような議論も進めるべきだろう。医師が安心し、結果的に患者のためになる医療情報DXの在り方とは何か。医師だけでなく、様々な医療従事者の声を聞き、議論を深める必要がある。日経リサーチでも継続的に調査を実施し、医療現場の本音を伝えていく。
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