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刺さるサステナビリティ活動 ―あなたの会社で発信すべき活動の見分け方―セミナーレポート中編

 本日はどのようなサステナビリティ活動を発信すべきかを中心にお話しする。
 なお、以下の3部構成にてセミナーレポートを用意している。


上編:サステナビリティに関する取り組みの現状と課題
中編:効果的な活動の発信のための必要な要素とは
下編:発信すべき活動は何か、その見分け方とは

効果的な活動の発信のために何をすべきか

効果的な発信のための評価の活用

 まず前提としてほとんどの場合、発信にかける費用や時間などのリソースは有限なので、発信の効果を得るためには効率的な発信が必要になる。そのためにはどこにリソースをかけるかの絞り込み、そしてそのための基準も必要だ。それを外部視点の評価で得る、ということをここではお話ししたい。具体的には、外部視点で評価を得て、評価が高い活動は発信を強化し、評価の低い活動は発信しないとか発信内容を変えるといったことにより、発信の効率性を上げて効果を高めることが必要になる。
 絞り込みの基準としての評価が必要なことはお分かりいただけたと思うが、その評価は本当に外部視点である必要があるのかが疑問になるかも知れない。

 

 

サステナビリティ活動を評価する視点

 外部視点での評価の重要性を考えるにあたり、活動を評価する視点をいくつか紹介する。サステナビリティ活動を評価するのであれば、「活動の社会課題解決に対する効果・影響」や「企業イメージ・ブランド力への影響」「業績向上への影響」など様々な指標に対する影響を評価軸とすることが考えられる。現状、活動は社会課題解決に対する効果・影響で評価されることが多いようだ。つまり活動によって社会が良くなったかどうかで活動を評価する。特に近年、インパクトと言われる活動の社会への影響を評価して可視化することが多くなり、社会課題解決に対する効果で活動を評価することがより広く行われるようになってきた。
 ただし 活動を発信して効果を得るという観点で見ると、発信の目的の主要な1つである 企業イメージ・ブランド力への影響で評価することが良いのではないかと考えられる。そうすると、評価は自社の主観でこれがいいと思うことではなく、また、CO2がどれだけ減ったかというような客観指標で評価するのでもなく、企業イメージ・ブランド力を形作るような消費者や顧客など外部の主観評価が必要になっている。これが活動を外部視点で評価することになる。

 

 

外部視点と顧客志向
 外部視点での評価と顧客志向の考え方には通じるところがある。顧客志向とは自社の強み中心ではなく、顧客のニーズを優先してビジネスを行うことである。一方、外部視点での活動評価はサステナビリティ活動が自社の主観ではなく、受け手に受け入れられるかで評価する、つまり、受け手思考でサステナビリティ活動を評価するということである。



顧客志向のサステナビリティ活動評価と発信
 これを更に発信という視点で具体的に見ると下表のようになる。4象限に分かれており、上段がビジネス、下段がサステナビリティを表している。まずビジネスでは、例えば、入浴剤で考えると、発色の良いものを作る技術があるから、色の良さを発信しよう、これが自社思考、シーズ中心の考え方。一方、効能が良い入浴剤を市場が求めているから、効能の良さを発信しよう、これが顧客志向の考え方である。

 

顧客志向のサステナビリティ活動評価と発信

 これはマーケティングの常識的な考えだが、サステナビリティの発信にこの考えを使っていない企業も多いようだ。具体的には、きれいな水を作る技術があるから、その技術を提供したことを発信する、これが自社思考のやり方で、きれいな水を飲めない人がいることへの関心が強いから、きれいな水をもらって喜んでいる人の姿を発信する、これが顧客志向の考え方である。技術がすごいという話ではなく、関心が強い人の姿にフォーカスして発信する。こういう形で情報の受け手がどのように考えているかによって活動の発信内容を決める必要がある。結論を比べてみると、顧客志向の方が何となく良い結果になりそうだと思ってもらえるのではないか。このように、自社がこうしたいという考えを発信するより、受け手がどう考えているかを把握して発信する方が、より効果が得られると考えられるので、外部の視点で発信内容を評価し、絞り込むことが重要になる。
 外部視点の評価の重要性を説明したが、評価をするにはどうしても調査が必要になる。また、活動の評価を調査するのであれば、実質的に活動の発信内容を調査することになる。例えば、工場の屋上に太陽光パネルを設置している、などと活動を一言で説明しても、評価を下すのは対象者には非常に困難なので、正確な評価を得るには、実際の発信内容を見せて評価を聞く必要がある。つまりより正確に言うと、活動の発信内容を評価し、その評価を基に発信への注力を判断することが必要になる。

あなたの会社で発信すべき活動の見分け方

 次に、活動を評価したとして、どんな評価を得たものを発信すべきなのかを説明する。ここは本日の本題になる。結論から言うと、より企業イメージ・ブランド力が高められる活動を見分けるには、応援される活動を探すことになる。応援される活動の効果が高いことは自主調査から分かっているが、どのような活動が応援されるのかは企業によって異なるので、自社で応援されるのがどのような活動かは調査が必要になる。

実際の調査結果では
 ここから実際に、応援される活動がイメージに与える影響が大きいのかを調査結果を基に見ていきたい。調査では実際の活動を見せ、その評価とそれを見た後のイメージの変化を調査し、活動評価によって指標が良い方向に変化するのかを確認する。
 調査の流れは、まず企業を知っているかを聞いた後、認知者に企業のイメージなどを聴取する。その上で1つの企業に対して、ホームページから切り抜いた1つの活動の画像を提示し、活動内容の評価を聴取した後に、イメージや指標の変化度合いを徴収する。

 

 

 実際、こうした自社への効果を期待してサステナビリティ活動を発信する企業も多いようだ。グラフは自社のサステナビリティ推進の関係者に対して、サステナビリティ活動を社内外に発信しているか聞いたものだが、「社内向け」と「顧客向け」に発信しているという回答がそれそれぞれ5割近く、「発信していない」は2割以下の回答になっている。回答者の8割以上が何らかの発信をしているという結果になった。

 

調査の流れ

 

「活動を応援したい」と「企業への共感が強まった」の関係

 

活動を応援したいと

 

 実際の結果は図の通りになった。これは「活動を応援したい」という回答と「企業への共感が強まった」という回答を組み合わせたプロット図である。プロットが上に行くほど、活動を応援したい人が多く、右に行くほど、共感が強まった人が多い。1つ1つのプロットは企業 を表しているが、1つの企業に1つの活動を割り当てて調査しているので、活動を表していると言っても良い。因みに、共感は当社のブランド調査でも総合指標として用いている、企業イメージを見る上で非常に重要な項目である。このプロット図はだいたい右上がりの関係になっていて、応援したい人が多い活動は共感が強まる度合いも高いことがここから見えてくる。

 

 

「活動を応援したい」と購入・利用意向、価格プレミアムの関係
 更に、2つのプロット図を作成した。「活動を応援したい」が縦軸で、横軸は左の図が「購入・利用したい気持ちが強まった」、右の図は「価格が高くても買いたい気持ちが強まった」という回答である。それぞれ回答のしやすさを考慮し、BtoCの企業のみに聴取した項目だが、売り上げに直結するブランドの重要指標になっている。
 どちらの図も右上がりで、「活動を応援したい」人が多いほど指標が高まる傾向が見られた。このように、応援したい活動は指標により良い影響を与えるので、応援したいと思われる活動を探すことが、あなたの会社で発信すべき活動の見分け方のポイントの1つになる。

 

価格プレミアムの関係

 

 

ブランドイメージの変化 ENEOSの場合
 同様に自主調査の結果から、ブランドイメージの変化という文脈で効果を検証したい。比較的活動評価の高かった企業の、活動を見た後のイメージ変化を説明する。まず取り上げるのがENEOSである。石油・ガスを販売している会社だが、ガソリンスタンドのイメージもあるだろう。ENEOSを知っている回答者にイメージを聞いたところ、グラフのような結果が出た。回答は最も多いものから、「一流である」「専門領域に強い」「環境に配慮している」といったイメージが続く。一流のエネルギー専門企業といったイメージだろうか。

 

ENEOSのイメージ

 次に対象者には、ENEOSのサステナビリティ活動を説明した画像を提示した。画像自体はホームページから切り抜いたもので、「次世代エネルギー事業 水素事業」というタイトルで、製造から販売まで一貫した水素サプライチェーンを構築しているという内容だ。この画像を見せ、中身を読んでもらい、その後にイメージが変化したか聞いた。

 

ENEOSの活動の説明

 

 先ほどのイメージのグラフに、今の画像を見て強まったイメージは何かという質問の回答を 重ねたグラフを作成した。赤の折れ線が強まったと回答されたイメージである。もともと強かった「環境配慮」や「社会のサステナビリティに貢献している」など、サステナビリティ活動を見た後に当然強まるであろうイメージに加え、「社会変化に対応できる」や「将来性のある」「革新的である」いったイメージが強まっている。水素という次世代エネルギーのサプライチェーンを構築することがこうしたイメージに結びついたのではないかと考えられる。

 

活動を見た後のENEOSのイメージの変化

 

 

ブランドイメージの変化 ライオンの場合
 もう1社、日用品メーカーのライオンを取り上げたい。ライオンを知っている回答者にイメージを聞いたところ、グラフのような結果が出た。最も多いのは「親しみやすい」で、続いて「信頼できる」「製品・サービスの企画開発力がある」と答えた人が多かった。身近な日用品メーカーのイメージだと言える。

 

ライオンのイメージ-1

 

 次に対象者には、ライオンのサステナビリティ活動を説明した画像を見せた。これもホームページからの切り抜きだが、「インクルーシブ・オーラルケア」というタイトルで、相対的貧困の問題から、全ての子供に予防歯科習慣を普及させる「おくちからだプロジェクト」を実施しているという内容である。対象者にはこれを読んだ後、調査に回答してもらった。

 

調査中に見せたライオンの活動の説明

 その回答結果を先ほどのようなグラフにすると、活動を見せて強まったのはまず、「社会のサステナビリティに貢献している」。これは当然として、それに加えて「親しみ」「信頼」「誠実である」「専門領域に強い」「顧客ニーズへの対応に熱心」といったイメージが強まっている。全ての子供に予防歯科を提供することがオーラルケアという専門領域の印象や信頼、誠実といったイメージに結びついたのだろうと考えられる。

 

活動を見た後のライオンのイメージ

 このように「応援される」という活動の評価と同時に、活動の実際の内容と発信内容もイメージに影響を与えることが分かる。これもあなたの会社で発信すべき活動をどう見分けるかのポイントの1つになる。

評価の低い活動をどう考えるか
 更に、見分け方のポイントの最後の 1点として評価の低い活動をどう考えるのかという問題がある。活動の評価は調査で調べることが必要だが、調査中に見せる内容、つまり実際に発信している内容によって評価が異なる・変化することが考えられる。評価の低い活動は活動自体が悪いのではなく、情報を受け取った人に興味・関心がなかったり、ニーズがなかったり、もしくは発信内容が良くなかったりといった場合があるので、限られたリソースの中で発信すべきかどうか、その内容を改善すべきかどうかといったことを考える必要がある。

 

 

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