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独自ツールで医師を分析(下)KeyExplorerが活躍する3つの場面

これまでKeyExplorerを用いた分析事例を紹介してきたが、3回目となる今回は、どのような課題にアプローチできるのかまとめた。

1.ターゲットのペルソナ設定

マーケティング活動において、誰に(Who)、何を(What)、どのように(How)を検討することは極めて重要であり、それはヘルスケア領域においても同様である。

ヘルスケアのマーケティングにおいて、「誰に」は大きく「医師」と「患者」とに分かれる。そしてKeyExplorerは過去2回(上)(中)で紹介してきたような医師の特徴だけでなく、患者の特徴もとらえることができるツールである。
仮に服薬頻度の高さが課題となっている薬剤があったとする。MRがこれに代わる自社製品を医師に紹介したい場合、まず会話のとば口で患者像をイメージしてもらうことは、医師への情報提供に踏み込むために有用であるが、その際、「服薬が守れていない患者さんはいませんか?」といった漠然とした問いかけでは、医師の印象に残らない恐れがある。
そこで、お勧めしたいのが当該疾患の患者に普段の生活状況も踏まえたアンケート調査だ。そして、その結果をKeyExplorerにかけると、例えば、服薬コンプライアンスが悪い患者の特徴だけを抽出したペルソナを設定できる。それが、

  • 男性・独身者
  • 30~40代
  • 会社員(管理職)
  • 喫煙歴あり
  • 併発疾患として糖尿病、高血圧がある
  • 運動習慣(月1回もない)

 

だったとすると、
「弊社のアンケートでは、薬の飲み忘れは30~40代くらいの男性で、運動習慣がなく、糖尿病などの併発疾患がある方に多く見られる傾向のようなのですが、先生の印象としてはいかがですか?」などと、医師が具体的に患者像を想起しやすいような問いかけに落とし込むことができる。KeyExplorerで分析した特徴から話が広がり、ディスカッションの機会創出につながることもあるかも知れない。
新たに参入する領域だけでなく、これまで扱っていた領域においても、思ったように製品が浸透していない・より浸透させたいといった場合に、現場感覚とKeyExplorerの分析結果をすり合わせることで、新たな気づきが得られる可能性もある。

2.製品メッセージが響く属性の精査

次に、上記のターゲットのペルソナ設定と似ているが、「何を」の観点から医師の特徴を捉える方法を紹介する。各製品に複数のキーメッセージを設定して浸透度を経時的に調査する場合、キーメッセージを認知・評価している医師と未認知の医師を分析軸とし、キーメッセージが響くのはどのような属性の医師なのか分析する方法があるが、ここにKeyExplorerを適用することも有効だ。単純なクロス分析ではなく、特徴量分析を活用したKeyExplorerであれば、例えば、キーメッセージにより、実は反応する医師層が異なる、といったことに気づけるなど、新たな発見につながる可能性がある。

3.特定の企業活動を評価する属性の精査

最後に、企業活動調査での活用事例を紹介する。

企業活動の調査はブランドイメージやNPS、MR活動、MSL活動など点数化可能な尺度とあわせ、評価する上で重要な要素は何か、評価できる活動は何か、といったデータを取得する形式のものが多い。通常の分析でもブランドイメージや各種評価に寄与する要素・活動は把握できるが、どのような特徴かは、各設問の集計データを見て各個人が判断するため、結果の解釈にばらつきが出やすい。
その点、KeyExplorerは大量なデータでも見落とすことなく、客観的な結果が、短時間で得られる。肺がん領域での製薬会社のブランド評価に関するコラムで紹介した下記の結果も、短時間で参照できる。

 

アストラゼネカを総合的に対寄りになる企業1位に選んだ医師の特徴表1:アストラゼネカを総合的に頼りになる企業1位に選んだ医師の特徴

 

 

製薬企業の評価が分かれるポイント

表2:製薬企業の評価が分かれるポイント


2つの表は各社を総合的に頼りになると回答した医師群にどのような特徴があるかを分析し、課題を明らかにしたものだ。具体的には表1はアストラゼネカをトップにした医師の特徴、表2はアストラゼネカほか2社のマーケティング活動の特徴と改善課題をまとめたものである。このように、どのような活動を重視しているのか、どのような属性・背景の医師からの評価が高いのかといったことも、調査データがあればすぐに参照できる。
総合的に頼りになる、という軸だけでなく、例えば、各社のNPS🄬*1を見ることにより、ロイヤリティの高いユーザーとそうでないユーザーは何が異なるのか把握できる。また、患者に対する企業活動を重視している医師の属性や特徴、医療経済を重視している医師の特徴など、クロス分析で見るにはデータが多く、煩雑なケースでも、KeyExplorerを活用することで、特徴の可視化が可能となる。それにより、「どのような」(How)活動をすれば、各種評価が改善するのかを検証することもできる。

 

*1:NPS®はネット・プロモーター・スコアの略で、顧客の推奨度・ロイヤリティを測る指標として普及している。今回の調査では「あなたの全体的な経験に基づいて、各製薬会社の肺がん領域における製品・活動・情報提供などを総合的に見て、どの程度推奨するか」と尋ねた。0~10点のスケールで、9点と10点を付けた医師を推奨者。0点~6点を批判者と位置づけ、推奨者の割合から批判者の割合を引いたスコアがNPS®となる。
ネット・プロモーター®、NPS®、NPS Prism®そしてNPS関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

おわりに

ここまで示したのは活用の一事例である。どのような調査にも当てはまるが、KeyExplorerにも課題に応じた最適な設計がある。何を明らかにしたいのか整理した上で、活用をご検討いただきたい。
近年は患者中心の医療を目指し、ペイシェントジャーニー調査をはじめ患者側を理解するための調査が増えているが、KeyExplorerは1の事例にあるように医師側だけでなく、患者側についても、製品の開発フェーズから、理解を進める上で活用できる。
患者アンケートは属性を割付できるほどサンプル数が集まらないこともあるため、分析の際、単純なクロス集計では群を設定することも難しい領域がある。そのような場合にも、KeyExplorerは患者の特性をつかむ一手として有用である。

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