BtoBブランディングの基礎|効果・方法まで解説
いかなる企業においても、ブランディングが重要であることを否定する人はいないでしょう。BtoB企業においても「なぜ重要であるのか」「どういった特徴があるのか」「どのような施策が有効なのか」を明確に説明できる担当者は少ないでしょう。
本コラムでは、BtoBブランディングの基礎知識とその効果や、ブランディング等の担当者へのアンケートからわかった効果的な施策について紹介します。
そもそもブランディングとはなにか
「ブランディング」は、企業そのものや商品やサービスなどについて、独自性や特徴を強調し、顧客に伝えるプロセスや戦略を指します。施策の対象にはロゴや名称だけでなく、その企業や商品・サービスが持つ世界観や、イメージなども含まれます。
ブランディングの目的は、企業や製品にポジティブなイメージを構築し、顧客の共感を高め、市場での競争力を向上させることです。
ブランディングとマーケティングの違い
マーケティングとは「サービスを顧客や社会に対して提供するまでの一連のプロセス」のことです。商品やサービスを売るために行う、市場調査・広告宣伝・販売促進などの活動全般を一般的にマーケティングと呼びます。
それに対してブランディングは「企業やサービスを、内外に向けて識別させること」です。
マーケティングと比べて、ブランディングは「他社との差異を明確に表現する活動」と考えると、ブランディングとして「何をするべきか」が明確になります。
BtoBとBtoCにおけるブランディングの違い
従来、ブランディングというと、BtoC企業の取り組みが先行しており、一般消費者向けの施策が中心でした。しかし、BtoB企業でも、顧客の感情やイメージに訴えることは重要と認識されるようになりました。
商品・サービスを購入する場面で、BtoBとBtoCで明確に異なる部分は以下です。
・購入に至るまでの意思決定の人数
・購入に至るまでの期間
BtoCでは、商品・サービスを購入するまでの意思決定は高額なものでない限り多くの場合、利用者本人が行います。しかし、BtoBでは、重要性や価格が高ければ高いほど、多くの人が購入までの意思決定に関与します。意思決定者が多い分、検討・成約・購入に至るまでの期間も伸び、数か月以上かかるケースもあります。
しかし、これらの購入までのプロセスも、ブランディングによって企業への信頼感が高まれば、競合商品・サービスに比べ優位に進めることが可能となるため、ブランディングへの注力は有益です。
BtoBブランディングによる効果
ブランディングの効果は多岐にわたりますが、ここでは代表的な、4つの効果を紹介していきます。
・市場でのポジション(立ち位置)の変更
・採用コストの軽減
・マーケティング効果の最大化
・顧客の意思決定の後押し
市場でのポジション(立ち位置)の変更
ポジショニングとは、顧客ターゲットに自社や自社商品・サービスを理想的な形で認識してもらい、企業イメージにおいて競合他社との差別化を図るための活動です。
新しい市場に活路を見出したい場合や、ある程度市場が成熟してしまった場合など、自社のポジションを変更する必要が出てきます。このポジションの変更を、リブランドやリポジショニングということもあります。
具体的な例では、2021年に法人や個人事業主向けにツールを販売していたfreeeがブランドの刷新を行いました。
「だれもが自由に自然体で経営できる環境をつくるために、「統合型経営プラットフォーム」を開発・提供します。
バックオフィス業務を統合することで、自動化と業務全体の効率化。さらに経営全体を可視化することで、これまでにないスマートかつ最適なアクションまで実行できるプラットフォームへと進化させていきます。」
出典:freee-Mission and Vision(https://brand.freee.co.jp/brand/missionandvision/)
会計ツールや労務ツールなど、バックオフィス業務の効率化を打ち出していましたが、21年に「統合型経営プラットフォーム」を打ち出し、市場での立ち位置(ポジション)を変更することで、顧客ターゲットを拡げ、さらに深く顧客企業に入り込む狙いがあったと思われます。
このように自社のポジションを変更するにあたっては、まず調査によって、自社または商品・サービスが、誰から、どのように認識され、どのようなイメージを持たれているのかを客観的に把握することで、精度の高いポジショニング戦略が立案できるようになります。
※ブランドに関する調査について、詳しくは以下の記事を参照してください。
https://service.nikkei-r.co.jp/report/brand_id144
採用コストの軽減
BtoB企業のブランディング戦略では、商品やサービスのみならず、企業そのもののブランディングも重要です。顧客や取引先、求職者から従業員まであらゆる人に向けて「自社らしさ」を認知、共感してもらう取り組みが必要になります。
「自社らしさ」を社外へ向けて発信(アウターブランディング)するとともに、従業員への浸透活動(インナーブランディング)を行うことができます。
社外に対して発信することで、企業の認知度とともに好感度も高まり、採用に多大なコストをかけずとも希望者が集まります。一般的にBtoB企業は、BtoCに比べて一般消費者への露出が少ないため、認知率が低いことが多く、就職活動時に応募先として候補にあがりにくいという課題があります。そのため、BtoB企業は若年層を中心に認知率と企業イメージの向上に力を入れています。具体的には、高校生向けの動画をサイトで公開したり、アミューズメント施設のネーミングライツなど様々な接点でブランディングを行っています。
また、社内に対する発信の効果としては、他社と比べて自社は特別な価値があると従業員に認識してもらうことで、誇りをもって働くようになり、離職率の低減にも寄与します。
※インナーブランディングについて詳しくは以下の記事を参照してください
マルチステークホルダー時代に必要なインナーブランディング戦略の重要性
マーケティング効果の最大化
繰り返しになりますが、マーケティングとは「サービスを顧客や社会に対して提供するまでの一連のプロセス」を指します。
このプロセスの中で、ブランドイメージが明確になっている企業とそうでない企業とでは、CVR(Conversion Rate:成約率)やLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)に差があることは、容易に想像できます。ブランドイメージが明確で、顧客から信頼を置かれていると、様々な成果指標が底上げされ、相乗効果で利益を出せるようになります。
例えば、前述したfreeeのような会計や労務のツールを販売している企業は数多くありますが、freeeについてツールだけでなく「経営全般を扱っているプラットフォーム」というイメージを持たれれば、同様の他の会計や労務のツールを取り扱っている企業より、優位性をアピールでき、選ばれる可能性が高まります。
顧客の意思決定を後押し
競合の商品・サービスがない、あるいは完全に商品・サービスの質だけで選ばれるサービスの場合、ブランディングをせずとも事業は成立するかもしれません。しかし、競合商品・サービスが参入し市場が成熟してくると、優位性を示すことが難しくなっていきます。
そのため、購入決定者や関与者に対して、いかに自社のブランドを認識・理解してもらい、競合との優位性を獲得するかということが大事です。自社のビジネスの環境整備として必要なことです。例えば稟議を上げる際、知らない会社だと経営幹部が却下する可能性があるので、認知率の向上も必要だと思います。さらに、こういう技術を持っているということをわかりやすく伝えることで、顧客側にその商品・サービスを選ぶ理由を提供できます。
BtoBブランディングのKPIはどうするか
「ブランディングの成果を数値化・可視化する方法が不明」という課題は一般的です。
ブランディングの効果は見えにくく、投資に踏み切りにくいものですが、その効果は蓄積されていきます。ブランディングを成功させるためには、効果を正確に可視化し理解する必要があります。
自社のブランディングにおけるKPIについて、日経リサーチが企業のブランディング担当者に行ったアンケートでは、以下が上位にあがりました。
・主に個人の意識を示す指標として「認知度」「顧客満足度」
・実態を計測する指標として「問い合わせ件数」「アクセス」「売上」
適切なKPIを設定して、定期的に効果測定し、改善を重ねることで、最適なブランディング活動を行っていくことが重要です。
※BtoBブランディングにおけるKPIについては以下の記事を参照してください
BtoB企業に必要な本当のブランド力 -失敗しない正しい調査設計-
BtoBブランディングを成功させるための方法
日経リサーチでは、BtoB企業のブランディング施策について、マーケティングに関わったことがある担当者にアンケートを行いました。
その結果から、3割以上の企業がブランディング施策に課題を感じていることがわかりました。
本コラムでは課題や施策について、概要を解説しています。より詳しいアンケート結果は、BtoB企業のブランディング施策「ターゲットに届かず」3割 -成功するための3つのカギとは-のコラムで解説しています。
3割の企業が抱えるブランディング施策の課題
ブランディング施策にどのような課題を感じているのか、担当者の自由回答から拾うと、以下のような声が見られました。
人材の問題
確かに、ブランディング戦略には専門的なスキルが必要です。
環境に応じた戦略を打てる専門家が必要であり、組織的にノウハウをキャッチアップできる人材がいない場合は、属人的な問題が発生してしまうことが多くあります。
方法の問題
ブランディングは、「どんな情報を発信するべきか」から「自社らしさをどのような具体的な文言で表現するか」など、大きな戦略から小さな戦術まで、幅広い知見とブレない方針が重要です。
顧客のニーズ、とりわけ新規顧客への発信の問題
ブランディングへの意識があっても、新規顧客へのアプローチができず、市場内で自社の規模を拡大できないジレンマもうかがえました。
1,000人以上に聞いてわかったBtoBブランディングを成功させる3つ方法
一方でブランディング施策を行えていると考える企業は、どのような施策を行っているのでしょうか。
実際のアンケートへの回答内容を紹介します。
ターゲットの明確化
まずわかったことは、ターゲットを絞り、そこに向けて注力することです。
「最優先事項」「密接に」とあるので、ターゲットの絞り込みとターゲットとの連動を重視し、ターゲットや施策をあれもこれもと、広げないことが重要だといえます。
施策の効果検証と改善
次に、顧客の反応を定期的に確認している点です。
施策を実行したあとに効果を確認し、よい結果が得られた施策は継続し、効果が得られなかった施策は原因を探り改善に役立てる必要があります。
豊富な知見による調査設計
最後に、日経リサーチが独自に行ったもう一つの調査結果を紹介します。
企業・製品の認知度やブランドの調査を手掛けたことがある87人のビジネスパーソンを対象に「どんな課題を感じているか」について聞いたところ以下のような回答になりました。
特にBtoB企業では、赤枠の「調査の知見がなく、実施が難しかった」や「課題に対し、正しい調査設計ができているかわからない」という声がどちらも30%ほど見られました。
知見がない場合は、そもそも調査を実施することができません。また、やみくもにデータを収集しても「この結果が何を意味するのか」の理解できないことがほとんどです。そのため、調査を実施する際には、知見を持つ専門家による設計を行う必要があります。
これまでの成功要因をまとめると、専門家の知見や入念な準備、施策後の改善が必要だといえるでしょう。
ブランディング施策は、社内の限られたリソースで適切な施策を行うことが難しいケースが多いため、信頼できる外部へのアウトソースが有効です。
ここまで課題や施策について、概要を解説してきました。より詳しいアンケート結果は、BtoB企業のブランディング施策「ターゲットに届かず」3割 -成功するための3つのカギとは-で解説しています。
BtoBブランディングの成功のカギは豊富な知見に基づく的確な調査
<当記事のまとめ>
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日経リサーチは、50年以上にわたるブランド調査の実績を有し、最大600社の企業ブランドデータベースを保有しています。これに基づき、BtoB企業のブランディングに対する的確なアドバイスが可能です。
特筆すべきは、自社のビジネスターゲット層に直接アプローチできる点です。日経リサーチが提供する「日経IDリサーチサービス」の活用で、国内最大級のビジネスパーソンプラットフォームである日経電子版読者を含む、ターゲット層の評価を把握することができます。ブランディングをより有益に進めるために、ぜひ当サービスをご利用ください。
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