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学生・若手ビジネスパーソンが「仕事で大切にしたいこと」トップは?-29歳以下の日経読者の仕事観を読み解く

 デヴィッド・グレーバー著『ブルシット・ジョブ』(邦訳2020年、岩波書店)は、ムダで無意味な仕事が増え、やりがいを感じずに働く人が多いという現代社会の労働のあり方について、膨大な証言・データを元に分析した名著である。

 思い当たる人も多いだろう。誰も読まない社内資料の作成、誰かを偉く見せるための儀式や手続き、部下に仕事を割り振るだけの管理職。人類学者グレーバーはこんなクソどうでもいい(=ブルシット)仕事こそ、現代の労働問題を解くカギと考えた。 

 ちなみに同書は、グレーバーの着想をきっかけに調査会社がアンケート調査を実施、「自分の仕事が世の中に意味のある貢献をしていない」という人が37%もいたことに衝撃を受けた彼が、さらに調査、研究を重ねて完成した。惜しくも2020年に亡くなったグレーバーだが、仮に日経リサーチが今回実施した若者の仕事観に関する調査を見たら何を思うだろうか。そんなことを考えながら調査結果を読み解いてみた。

1.学生の73%が「仕事にやりがい大切」、社会人より10ポイント高く

学生調査1

 

 日経リサーチが29歳以下の若い世代に「仕事するうえで大切にしたいことはなにか」と聞いたところ、「やりがいを感じること」という回答が67%となり、「興味のある仕事をすること」(62%)や「より多くの収入を得ること」(58%)を上回って最多となった。グレーバーのことばを使うなら、「ブルシット・ジョブは嫌だ」というわけであろう。

 調査は2023年4月3~6日、日経電子版の購読などに必要な「日経ID」の登録者のうち、29歳以下の方を対象にオンラインで実施した。大学生や大学院生など学生178人、会社員や公務員として勤務する社会人176人、計354人から回答を得た。

 「やりがいを感じること」という回答は特に学生で多く見られ、全体の73%に上った。社会人(63%)より10ポイント高かった。

 また学生で目立ったのが「人や社会に役に立つこと」との回答で、全体の57%が選んだ。社会人では43%で、14ポイントの差がついた。一方で「スキルアップや成長を実感できること」という回答は社会人で53%と多く、学生(44%)を9ポイント上回った。

2.社会人はより“現実志向”、給料やテレワーク制度を重視

学生調査2

 

 具体的な就職先を考える際には、より現実的になるのだろうか。「就職意向先の重視点」についても聞いたところ、「給料が良い」の回答が全体の72%で最も多く、「やりがいのある仕事に携われる」(61%)を11ポイント上回った。

 ただ学生だけで見ると、69%が「やりがい」を選択し、「給料が良い」(68%)をわずかに上回り、最も多かった。社会人では「やりがい」は55%にとどまった。社会人で比較的多かったのが「テレワーク・在宅勤務制度が整っている」(32%)で、学生(19%)を13ポイント上回った。

 仕事観における学生と社会人の違いをどう解釈すべきか。会社などに入って職業人として経験を積むうちに、考え方も現実に合せたものになっていくのは自然の流れだろう。一方で働き方改革の進展、SDGsの概念の広がりなど、時代の変化がより若い世代の仕事観に影響を与えている可能性もある。

 SDGsは2015年に国連で提唱され、現在の大学生は中高生の時代からSDGsに関連する教育を受けた世代でもある。採用面接に関わるあるメーカーの人事担当者は「最近の若い人は社会貢献を方便ではなく本気で考えている」と話す。こうした傾向が若者の仕事観にどのように反映されてくるのか。今後に注目したい。

 

3.「仕事よりプライベート優先」全体の72%に、過半数は管理職志向

学生調査3

 

 

 今回の調査では「将来、生活や仕事をしていくうえで何を優先するか」についても聞いた。まず「仕事かプライベートか」については、全体の72%が「プライベート重視」と回答した。「海外より国内勤務がしたい」「独立より大企業で働きたい」との回答も多数を占め、いずれも全体の8割を超えた。

 「管理職か専門職か」の問いでは、管理職を志向する回答が54%と、専門職志向の46%を上回った。これらの回答では学生と社会人の間で大きな違いが見られなかった。

 調査結果を全体としてみると、若い人の間ではやりがいや社会貢献を大切と考える傾向が強い一方、やや内向きで現実的、安定を重視する姿勢もうかがえた。

 「仕事で何を大切と考えるか」「仕事で何を優先するか」という質問はありふれてはいるが、働き方や生き方の本質を突く問いである。とりわけ若者の仕事観はこれからの企業のあり方、社会の行方を左右する重要な要素になる。若者の声を将来に生かしていくためにも、信頼できるデータ、調査を丹念に追うことがあらためて重要になろう。

 

日経リサーチが提供する「日経IDリサーチサービス」では、日経電子版の読者を主な調査対象とし、幅広い層のビジネスパーソンの意識や動向を把握できます。アプローチしにくい29歳以下の学生、若手ビジネスパーソンの実態に迫ることも可能です。貴社のビジネス課題解決に、「日経IDリサーチサービス」をぜひご活用ください。

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