選定療養制度改正の影響は?【コラム1】|「後発医薬品の利用促進」一定の効果だが薬剤師の負担増
2025.1.16
日経リサーチは2024年12月、同年10月にスタートした長期収載品の選定療養制度の効果と課題について調査した。同制度は医療費抑制を目的に、同じ有効成分の後発医薬品が存在するにも関わらず先発医薬品を希望する患者が差額の25%を自己負担する制度。薬剤師を対象にした調査結果をみると制度開始以降、後発医薬品の利用拡大を実感する一方、患者への説明や在庫管理などの業務の増大を感じていることがわかった。一方、制度の仕組みを知っている患者は調査対象の2割強にとどまった。今回の調査は薬剤師と患者の2者に実施し、結果を3回に分けて紹介する。
薬剤師調査概要
手法 : オンライン調査 サンプル数 : 1,002s。内訳:院内薬局勤務302s、門前他院外調剤薬局勤務700s サンプルソース: 日経メディカル Online登録者 調査実施期間 : 2024年12月2日~12月4日
院外薬局の薬剤師「業務に影響」84%
まず薬剤師に選定療養が業務に影響しているかを聞いた。結果は72.0%が「影響している」と回答(やや影響している、との回答も含む。グラフ1)。回答結果を院外薬局と院内薬局の勤務先別に比較すると、圧倒的に院外薬局の薬剤師が業務への影響を感じていることがわかった(グラフ2)。自由記述を見ると、深刻な後発医薬品不足への対応や患者への説明の負担が大きいことが指摘されている。そこで今回のコラムでは今回の制度の影響が大きい院外薬局勤務(700名)に対象を絞って結果を紹介していく。
次に制度改正について「賛成」か「反対」かを聞いた(グラフ3)。「賛成」が21.4%で「概ね賛成」が45.0%。合算すると7割近くが前向きにとらえている。改正前の24年9月実施の調査結果と同様の傾向だが、今回の方が「概ね賛成」の割合が大きく、「賛成」の回答が減った。後発医薬品へのシフトを後押しし、国民医療費を抑制する大きな狙いについては賛同できても、業務への影響増大と医薬品を安定供給できないリスクを実感していることが回答に影響したようだ。
後発医薬品の処方6ポイント上昇
さらなる後発医薬品の処方は進んでいるのか。制度導入前後で処方割合がどの程度変わったのか、数量ベースで回答してもらった。比較すると先発医薬品の処方は平均が18.3%となった一方、後発医薬品の処方は81.7%となり、平均では6ポイントほど後発医薬品の処方は上昇した(グラフ4)。
数量ベースとは別に、薬剤師が感覚として後発医薬品の処方が促進すると思うか聞いたところ、「促進」「やや促進」合わせると91.7%。9月調査より10ポイント上昇するとともに、「促進」の回答率は45.4%と9月調査に比べて20ポイント以上高まった(グラフ5)。
患者から先発医薬品の処方を希望する傾向についても聞いた。処方箋の患者希望欄に「記載があった」との回答は71.6%と高いが(グラフ6)、定量的に「一カ月で応需する処方箋のうち、どの程度の割合か」と聞くと「10%未満」との回答が9割近くとなり、平均すると4.8%にとどまっている(グラフ7)。先発医薬品を希望する患者の割合はかなり低いことがわかる。
ここまで、コラム1では薬剤師の状況について紹介した。次回コラム2では、患者の状況について紹介する。
※関連リンク
【コラム2】「後発医薬品の利用促進」患者の認知進まず(1月23日公開予定)
【コラム3】後発医薬品不足で「安定供給の危機」―曖昧な制度、現場にひずみ(1月30日公開予定)
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