偏差値
学生時代から偏差値と身近に接触してきた人が多く、偏差値はよく知られた用語である。そのため偏差値には「悪いイメージ」も付帯しているが、偏差値は悪者でも善者でもなく、純粋に統計的な量に過ぎない。
ひとことで言えば、偏差値とは得点を、平均m=50、標準偏差s=10になるように変換(これを基準化という)した得点である。
利用目的は、相対的な位置を知ることができる利便性にある。特に学力テストのように数十万人が受験し、得点が正規分布に近い形になる場合には、正規分布の性質を使用することができる。たとえば偏差値40~60の範囲(±1s)に約68%が含まれるとか、偏差値70(+2s)以上は2%強しかいない、というような目安である。
ただし、偏差値は正規分布していない得点でも変換できるし、偏差値化したら分布の形が正規化されるわけでもない。
また、得点の尺度・単位に物理量のような寸法がない場合に、無名数に変換し、標準偏差を単位として相対的位置を表現する指標としても使われる。企業評価ランキングでも、多数の評価項目を合成した得点を基準化して表示している。統計理論的には、数学的な操作が便利になるという性質もある。
<偏差値を求める変換手順>
1.中心化
まず平均値を引く。この操作を中心化という。
2.標準化
中心化した得点を、標準偏差で割る。これを標準化という。
3.標準得点
元の得点(x)から、その平均値(m)を引いて、標準偏差(s)で割った結果の得点は、平均0、標準偏差1になる。これを標準得点あるいは標準化得点(z)という。数式で書くと以下のようになる。
4.偏差値
標準得点は任意に原点と標準偏差を変更できるので、平均50、標準偏差10に変換する。これを一般に偏差値(t)と呼んでいる。
もちろん、平均を50以外に決めることも、標準偏差を10以外にすることも任意である。平均500、標準偏差100にすることが目的なら、上の数式を変更し、100倍して500を足すだけである。
5.いろいろな基準化
平均と標準偏差で基準化(標準化)する習慣が統計学にあるのは、理論的な展開が便利であるという側面もある。基準化はどのようにも一次変換できるので、たとえば最高100点、最低0点になるように基準化したこともある。実際、企業評価ランキングでは総合スコアを最大1000点とか、最大100点などに変換することが多い。これは平均(中心)からの距離感よりも、トップ企業からの隔たりを見たいという要請に対応している。最大値(max)と最小値(min)を使った基準化は、数式で書けば以下のようになる。最大100にする場合はyを100倍する。最大1000にする場合はyを1000倍する。