自主調査
業界用語という側面があるが、調査会社が自主的に企画して実施する調査のことである。なぜ調査業界に「自主調査」という用語が流通しているか、という説明はそのまま調査ビジネスの背景を示している。
マーケティング調査は、生産者と消費者との間に立っている。消費者の意見等を調査・分析し、その結果を商品開発や販売戦略に役立てる――これがマーケティング調査であり、産業としての調査業界が成立している。典型的には企業が調査の発注者であり、調査会社が受注者である。つまり、マーケティング調査は企業が調査費用を準備して、調査会社に発注した時に発生する。調査会社は企業からの注文を「受けて」調査を実施する。これが調査事業の主要な形である。
しかし、調査会社が(企業からの注文なしに)自主的に調査を企画・実施することもある。それが「自主調査」と呼ばれている調査である。自主調査は注文を受けて実施するわけではないが、当然のことながら、調査結果には需要があり、企業が購入することを想定して企画されることが多い。
日経リサーチの場合では「ブランド戦略サーベイ」「ストア戦略サーベイ」「商圏センサス(首都圏センサス・関西センサス)」「サラリーレポート」などが自主調査であり、これらの自主調査のレポートを企業は購入することができる。
レポート販売という事業モデルのほかにも自主調査があり、シンジケート調査やオムニバス調査が典型である。
ちなみに「自主調査」という用語は厳密な定義を与えられた学術用語ではなく、日常語の範疇に含まれる。調査会社が自主的に実施する調査だけでなく、一般の事業会社が自社で必要に応じて実施する調査を「自主調査」と呼ぶこともある。これも調査ビジネスの背景に関係している側面がある。なぜ企業が自主調査ではなく、調査機関を通じてマーケティング調査を実施するのか、という背景である。それは第三機関による調査が必要だからである。自社の商品に関する調査を実施する際に、自社の名前で消費者に調査を実施するよりも、第三者機関により公平に調査したいということである。そのためマーケティング調査では、回答者に依頼企業の名前を明らかにしない調査が多いのである。